この記事の要点
- 運動が認知パフォーマンスに良い影響を与えるという報告が複数あります。
- エビデンススコアは、認知パフォーマンスで59(中程度の信頼度)、記憶に関しては36(限定的な信頼度)です。
- 高齢者の方から健康な成人まで、幅広い年代の人に関係する内容です。
運動と認知機能とは、身体を動かす活動と、記憶や情報の処理といった脳の働きを指します。
これらは、身体や脳の機能を示す指標として、さまざまな文脈で扱われています。
運動と認知機能は、認知パフォーマンスに良い影響があるという研究が報告されています(研究2件、信頼性は中程度)。
認知パフォーマンスとは、物事をどれだけスムーズに処理できるかといった、脳の働きの指標のことです。
ひとつめの研究では、認知機能に課題を抱える44名の高齢者を対象に行われました。この研究は、(参加者をランダムに分けて効果を比べる、信頼性の高い研究方法)という形式で行われています。内容は、通常の筋力トレーニングに加え、運動しながら別の作業も行う「デュアルタスク」を取り入れたグループと、筋力トレーニングのみを行うグループを比べたものでした。その結果、二つのことを同時に行うタイプの運動が、認知機能の向上においてより効果的であるという報告があります。つまり、体を動かしながら頭も使うスタイルが注目されています。
もうひとつの研究では、45名が参加した地域在住の高齢者を対象とした調査が行われました。これについてもランダム化比較試験(参加者をランダムに分けて効果を比べる、信頼性の高い研究方法)として実施されています。この研究の結果では、運動によって処理速度(情報を素早く正確に処理する能力)や実行機能(物事を計画したり、状況に合わせて考えを変えたりする脳の働き)、そして歩行スピードなどの身体的なパフォーマンスが向上したことが示されました。
運動と認知機能は、記憶に良い影響があるという研究も報告されていますが、まだ研究数が少なく、確実とは言えません。
エビデンススコアは36であり、信頼度は限定的なものとなっています。
記憶に関する研究をまとめると、いくつかの傾向が見えてきました。(複数の研究結果を統合して、全体的な傾向を調べる手法)という方法を用いた調査では、運動が脳全体の認知機能に良い影響を与える可能性が示唆されています。具体的には、有酸素運動は認知機能の全般的な働きに、筋力トレーニングは実行機能に、そしてマインドボディ・エクササイズ(心と体のつながりを意識した運動)は記憶に関係しているという報告があります。
一方で、結果が一致しないケースも存在します。たとえば、アルツハイマー型認知症の高齢者96名を対象とした小規模な研究では、週に数回行われる有酸素運動が、ストレッチと比較して認知機能において優位な効果を示すかどうかを検証しました。この試験の結果は、有酸素運動がストレッチよりも優れた効果を示したとは言えないというものでした。これは、研究の規模(パワー)が十分でなかった可能性も指摘されています。
これまでの研究では、人によって取り組む内容や期間に違いがあります。
たとえば、42日間の短期間で実施された研究では、週に3回、1回につき40分程度の運動が行われていました。一方で、半年間(6ヶ月)という長い期間、週に数回のサイクリングを続けた研究の例もあります。
また、システマティック・レビュー(特定のテーマについて、これまでの研究を網羅的にまとめたもの)によれば、成人や高齢者において有酸素運動や筋力トレーニングが恩恵をもたらすことが示されています。人によって結果には違いが出る場合もあり、すべての人に同じように作用するとは限りませんが、さまざまな種類の運動が脳の働きに関わっていることが示唆されています。
| 研究 | デザイン | 対象者数 | 期間 | 主な結果 |
|---|---|---|---|---|
| BMC geriatrics(2024・PMID:38658827) | ランダム化比較試験(RCT) | 44名 | 42日間 | 良い影響が報告された |
| The journal of nutrition, health & aging(2018・PMID:30272098) | ランダム化比較試験(RCT) | 45名 | 112日間 | 良い影響が報告された |
| Journal of Alzheimer's disease : JAD(2021・PMID:33523004) | ランダム化比較試験(RCT) | 96名 | 不明 | 明確な関連は見られなかった |
| Ageing research reviews(2023・PMID:37924980) | メタ分析 | 不明 | 不明 | 良い影響が報告された |
| Cellular and molecular life sciences : CMLS(2016・PMID:26646070) | システマティック・レビュー | 不明 | 不明 | 良い影響が報告された |
どんな人を対象にした研究?
研究の対象者には、認知機能障害を持つ高齢者44名、認知フレイルを有する地域在住の高齢者45名、アルツハイマー型認知症の高齢者96名が含まれています。そのほか、健康な子供、成人、高齢者、および動物モデルも対象となっています。
研究の対象には、特定の状態にある高齢者から健康な子供、動物モデルまで幅広く含まれているため、自身の状況を考える際の材料となります。
注意点・限界
本トピックに関する研究は計5件です。研究デザインには、ランダム化比較試験(RCT)、メタ分析、などが含まれています。
認知パフォーマンスに関する研究は2件で、信頼性は中程度とされています。
一方で、記憶に関する研究は3件あり、信頼性は限定的です。また、アルツハイマー型認知症の高齢者を対象とした研究において、期待された効果が示されなかったという報告や、動物モデルを用いた研究も含まれています。
運動と認知機能は、認知パフォーマンスにどのような影響を与えると報告されていますか?
認知パフォーマンスに良い影響があるという研究が報告されています。その研究件数は2件です。
運動と認知機能に関して、記憶への影響についてはどのようなデータがありますか?
記憶に対して良い影響があるという研究が3件報告されています。ただし、信頼性は限定的です。
運動と認知機能の研究には、どのような対象者が含まれていますか?
認知機能障害を持つ高齢者や認知フレイルを有する高齢者、アルツハイマー型認知症の高齢者などが含まれています。また、健康な子供や成人、動物モデルも対象として挙げられています。
運動は、認知パフォーマンスの向上や記憶への関与について、いくつかの報告があります。しかし、研究によって結果が異なる部分もあり、記憶に関してはまだ信頼性が限定的なものも含まれています。
今回の内容はあくまで研究データに基づいた情報であり、すべての人に共通する効果を保証するものではありません。
ご自身の今の状態が気になる方は、セルフチェック診断で確認してみましょう。

